2020.01.31.Fri.

ネパールで行う動物保護のカタチ

〜ネパール カトマンズ在住 Mさんご夫妻〜

動物保護のカタチは、国や地域によって大きく異なります。
その理由は経済や環境、教育や宗教観など様々です。
1つ認識をしておきたいのは”日本のカタチ”が基本でも標準でもないということ
他の価値観を知ることで日本の動物保護も日本にあったカタチで変化を期待できるのではないか?様々な国や地域で犬の保護に向き合う方たちのインタビュー連載。
視野を広げることやイメージすることはどんなことでも大切だから。

プロフィール

世界の動物保護のカタチ第2回目は、2013年にネパールへ移住したMさんご夫妻。
貧困の中、現地で生きる子どもたちへの支援を行いながら、犬の愛護や保護活動も行っています。
100m間隔で存在するたくさんの野良犬たち。せめて目の届く範囲の犬たちが笑顔になれたらとネパールの現状や環境に合った形で野良犬たちにふれあい、見守る活動をされています。
今回は、Mさんご夫妻が住む都市部の中心から少し離れた地域を中心とした「ネパールで行う動物保護のカタチ」です。

ネパールってどんな国??

亜熱帯のジャングルからヒマラヤ山脈と変化に富んだ国土に、30以上の民族が暮らす南アジアに位置しています。
東、西、南はインドに、北は中国チベット自治区に接する西北から東南方向に細長い内陸国で、宗教は国民の約8割がヒンドゥー教です。
多くの地域では365日停電が起こり、人間の子どもたちでも肺炎で命を落とすことが多い世界最貧国です。

世界には約3億頭の野良犬がいると推測され、中でもインドは最多と言われ全体の約1割が生息しています。現在ネパールにとって隣国インドはビザがなく行き来することが出来、就労することも可能なほど文化や環境、生活は近しいものがあり、インドと同じくネパールにも多くの野良犬がいます。
野良犬だけではなく、野良猫、野良牛も多くおり、人間もみんな貧しく、持っているものをシェアし、尊重して支えあい穏やかに暮らすあたたかな風土です。

ネパールに住む犬たちと関わり

ネパールには、犬を販売するペットショップの存在自体がほとんどありません。
ドッグフードを販売するペットショップもごくわずか。
動物病院もバスで1時間かけて行く必要があるなど病院施設自体も限定的で、さらに医療水準は大変低くレントゲンや血液検査も無いため体調不良の原因解明が出来ず、治療が困難なケースも多くみられます。
そういった背景もあり、Mさんご夫妻は野良犬救援品を携帯し、犬たちのサポートを行っています。

ネパールに住む犬たちはその多くが野良犬です。
そもそも野良犬を捕獲する文化が無いため、捕まる心配や殺される心配は無く、地域犬として子どもから大人まで国民全体で見守って、育てている。これが大きな特徴です。
ただ、交通量の多い地域では、交通事故による死亡が絶えないため犬を保護し、家庭犬として迎えるケースもあります。
また殺処分しないだけでなく、事故や病気の野良犬を見かけると、地域で見守る人がすぐに動物病院へ連れて行きます。

「先日、野良犬の仔犬が交通事故にあった時も近所の人がすぐ病院に連れて行きました。
残念ながら足の切断が必要になりましたが、その方がこの仔犬を家庭犬として迎えることになりました。
時給60円の人が5,000円の手術代を出し、世話する。しかも野良犬に…」

野良犬たちは成犬になってしまうと大抵ドッグフードを食べません。
食べたことの無いものは避けるという自然の知恵です。
ネパールの朝食は、クッキーとチヤ(ミルクティー)なので、みんなが犬たちにクッキーをくれるのです。
だから、1番最初に好きになるのは、どの犬もクッキーです。
しかし、日常的にクッキーばかりでは栄養補給は十分ではありません。
そのため仔犬の頃から栄養価の高いドックフードも食べさせる経験が大切です。

野良犬ウィッシュが教えてくれたこと

Mさんご夫妻と野良犬ウィッシュとの出会いは、ウィッシュが生まれて間もない頃、母犬と5頭の兄弟犬と共に暮らす仔犬時代に遡ります。
母犬はウィッシュたちを出産後しばらくして病気で亡くなってしまいました。
地域犬として近隣の住民でその仔犬たちを見守っていたところ、ウィッシュは交通事故に遭いトラックに轢かれてしまいます。Mさんご夫妻が急遽ウィッシュを保護し、緊急措置として動物病院へ運び奇跡的に一命を取り留めました。
すくすくと大きく育つウィッシュでしたが、数ヶ月後、ウィッシュも病に倒れてしまいます。ウィッシュを救いたいと複数の動物病院に通いましたが、血液検査もレントゲンもないこの国の動物病院ではウィッシュの病状の原因がわかりません。
手厚い看護を受けたウィッシュでしたが、とうとうその甲斐も虚しく母犬のいる天国へ。

今、日本では多くの犬たちが最先端の医療を受ける機会を得て、寿命を年々伸ばしQOLも高く、快適に過ごすことがあたり前です。でも、国が違えば、体調不良になった時に、その原因を解明することもできないこの不平等な現状があります。
ウィッシュがどんな病で亡くなったのか今となっては知る由もありません。

Mさんご夫妻は、亡くなったウィッシュがくれたものを教えてくれました。

  1. 揃えられた海外の犬用治療薬
  2. 治療を通じて出会えた3つの病院と獣医師
  3. 犬たちを愛し、守りたいと思う多くの方とのつながり

ウィッシュが運んでくれた多くのつながりで、今後の保護活動において未来の犬たちを助けることができます。

ご夫婦は、ネパール全域の野良犬を救おうとしているのではなく、身近な野良犬には幸せでいてほしいというシンプルでベーシックな気持ちで活動されており、その空気感がとてもあたたかく伝わりました。犬を守りたいと思う第一歩の活動として、お二人がSNS発信を行うことで世界中の多くの方に知ってもらうきっかけを作られているのだと感じます。
狂犬病フリーのネパール。狂犬病により犬が亡くなったとしても本当に原因が狂犬病だったのかさえわからないそうです。今、この現状が本当に犬たちやネパールに住む人たちにとって理想的なのかどうか、それはわかりません。でも、多くの犬たちは地域の方に愛され、幸せに過ごしています。“犬を飼う”と言えば、”野良犬を保護する”のがあたり前。保護をした家族も、「保護した」とか「保護犬です」と言う感覚さえ無い。ネパールではそれが日常だから・・・

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