日本の犬の流通を可視化する〜うちの犬ってどこから来たの?〜TYPE1 野良犬と野犬

           

犬と暮らしていると「どこから迎えたの?」という愛犬家同士の会話は日常的です。その答えは、ペットショップ、ブリーダー、保護団体、愛護センター、友人から・・・など様々です。でも、そのもっと先、ペットショップ、保護団体、愛護センター、友人の元へ来る前は、一体その犬たちはどこにいたのでしょう?うちの犬って、一体どこで生まれて、どこから来たのだろう??どんな道のりをたどって私たちの家族になったのか。私たちは、日本に暮らし犬との暮らしを考えた時、実はどのように犬を迎えていたのか、日本の現状を知る場所、そして具体的に動ける場所を作りたいと思います。

現在、犬猫は生体販売の流通過程で年間約80万頭が取引され、そのうち約25,000頭が死んでいると言われています。今まで解決すべきは殺処分問題の比重が大きかったかも知れません。ところが現在、犬に限っては殺処分約8,000頭、流通死約12,000頭と逆転現象が起こっています。そのことから、私たちは日本の犬の流れを数値をもとにニュートラルに可視化することにしました。もちろん、数値はあくまでも1つの指標にすぎません。この数値に入らない犬たちの存在も、そして先日のNEWSにもあったように数字の操作もそれなりにあると認識をしています。ただ、まずはここから、せめて見えている部分の中からできることを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

今後、数々のテーマに沿って1つづつ犬の流通について紐解く連載がスタートします。今回は「TYPE1 野良犬と野犬」について学びを深めていきます。皆さんの“犬を知る“を一緒にアップデートしていきましょう。

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そもそも野良犬と野犬とは?

今回のテーマで登場した”野犬“は唯一、自然繁殖で生まれる犬たちです。
迷子、放棄、放し飼いなどで飼い主を失った「野良犬」が野生化し、生んだ子どもたちを「野犬」と呼びますが、避妊去勢をせずに野放しになっていることで、その地域に爆発的に野犬が増えていきます。
そして、結果からお話しすると、私たちがこの問題に対して「できること」は、犬と暮らしたいと考えた時に、あまりにも増えている野良犬や野犬たちを家庭犬として愛護センターから直接迎えること。そして、犬と暮らす全ての方が野良犬や野犬という存在が自分の行動ひとつで起こしてしまうかもしれないという当事者意識が必要だと考えます。

そもそも犬は人というパートナーがあってこそ生活を営むいきものであり、共に暮らす「飼い主」が必ず必要で、そのように改良されてきた歴史があります。
自然に生きる野犬たちは食や医療など様々な面から管理不足により寿命が圧倒的に短く、家庭犬の平均寿命10〜13年に対し、2〜3年という点も悲しい事実です。

野良犬や野犬は、地域を管轄する愛護センターが捕獲をしており、環境省から発表された資料や数値をまずは読み解く必要性があります。

いまの保護状況ってどうなってるの?


引取り数:愛護センターが保護した数(環境省)
返還数:迷子などで飼い主に返還した数(環境省)
譲渡数:愛護センターから直接新しい家族へ譲渡した数+保護団体へ渡った数の総数(環境省)
殺処分数:愛護センターで殺処分された数(環境省)
()内の数値は、平成30年度より開示が始まった飼育可能にもかかわらず、殺処分されてしまった数
推定野良犬捕獲数:引取り数から返還数を引いた数(enkaraリサーチ)

この数値から読み解けるものとして、愛護センターが保護した引取り数から迷子などで飼い主へ返還された返還数を引いた数を暫定として算出すると、一般家庭から愛護センターへの持ち込みも若干数あるものの「推定野良犬捕獲数」がわかります。
また、上位10位に香川県・愛知県・徳島県が入ることでもわかるように四国は環境や風土として1年を通して温暖である気候が故に推定野良犬捕獲数が多く、全国スケールで見たときに圧倒的な割合を占めていることもわかります。例えば平成30年度の数値を見ると、四国全体で年間4,456頭の犬が推定捕獲されており、全国24,197頭のおよそ2割は四国で捕獲しているという厳しい現状があります。

各地方自治体の取組みとは

最新データの平成30年度を上位から見てみると、
ワースト1位の香川県は、引取り数2,582頭に対し、推定野良犬捕獲数2,367頭。
ワースト2位の広島県は、引取り数2,246頭に対し、推定野良犬捕獲数1,913頭と、大きな差異はありません。
ただ、その数値に対し大きく違うのは殺処分数です。
香川県において飼育可能にもかかわらず、殺処分されてしまった殺処分数1,309頭に対し、広島県は殺処分数0頭です。
香川県は、野良犬・野犬の数に比例して殺処分が高水位なことに対して、
広島県は、香川とほぼ同じ数の野良犬・野犬を捕獲している想定であるものの、殺処分数はゼロであり、圧倒的に譲渡率が高い特徴があります。

そのキーとなるのが、ふるさと納税などの寄附金を資金源とし運営を行う、動物保護団体の存在です。
広島県にあるNPO法人動物保護団体は、平成28年からふるさと納税に参入し、年々寄附額は増え、団体施設が建つ市町村の平成30年度寄附額は総額5億2千万円に___この莫大な寄附金額を有効に使い、広島県内の愛護センターから殺処分予定の犬をほぼ全頭独自で運営する保護施設へ移送しています。
さらに全国8箇所のサテライト保護施設を運営し、広島県から各地へ犬を送り、新しい飼い主と繋がる独自の仕組みを築いています。例えば、平成30年度に広島県が譲渡したとされる2,107頭のうち、同年該当保護団体が受入れた頭数は1,459頭であり、約7割の犬を受入れ保護しているという実績を正式発表しています。
全国規模で考えた時、同じように保護団体が自治体と繋がりふるさと納税を保護費用にあて課題解決に向き合っているものの、広島県のように成果を上げている自治体はまだ少ない現状があります。犬の寿命を平均年齢の10〜13年と考えた時、10年スケールで広島県における「野良犬・野犬」の捕獲数数値変動に大きな成果が出たとしたら、この仕組みは社会問題に対して大きな功績だと言えるでしょう。

一方香川県は、「愛護センターしっぽの森」を平成27年度に建設したものの、その平成27年度から平成30年度までの3年間の数値推移を見ると、譲渡数は若干増えたがそもそも捕獲数も増え、殺処分数に大きなインパクトはありません。ただ今月、センター主催の第1回動物愛護ボランティア養成講座が開催されたように今後も地域にあった施策の動向を見守ることで数値変動が期待できるかもしれません。
参考までに高知県は、令和元年度の県内犬殺処分数を速報値として3頭と発表しました。前年度より22頭減り、史上初の1桁になりました。(高知県 健康政策部 食品・衛生課発表)
取り組みとして、「譲渡動物への不妊去勢手術等の費用の助成」があり、譲渡された犬猫の一部に実施していた不妊去勢手術やワクチン接種等への助成を、平成30年度から全ての譲渡動物(ただし高知市内で保護等された犬猫を除く)に拡大して施策を実施しています。

enkaraが取り組みたい問題

平成30年度、譲渡されていない犬の総数は7,503頭。 その数は、ほぼ同年における年間殺処分数7,687頭と同じ数です。ただ,その数値の中には、譲渡することが適切ではない治癒の見込がない病気や攻撃性があると判断された犬と,何らかの理由によるセンター内での死亡が含まれています。
私たちが、最も問題だと考えること。
それは、年間殺処分数に含まれている愛玩動物または伴侶動物として家庭で飼養できるにも関わらず殺処分された犬の総数 3,000頭
私たち日本人が、この問題に対してできることの1つとして、犬たちの命がきちんと循環する方法として考えられることは、犬と暮らしたいと考えた時に、各愛護センターから直接「野良犬や野犬」と思われる保護犬を迎えることだと考えます。

平成30年度、犬の全国登録頭数は6,226,615頭。 そのうち、52.6%の飼い主がペットショップから犬を迎えています。選択肢の1つとして、全国都道府県にある愛護センターから直接犬を迎えることができたなら、健康的な「3,000頭」が野良犬でも野犬でもなく、家庭犬になれたなら・・・日本の野良犬と野犬の問題は明るい未来の方向へ向かうはずだと私たちは仮定します。

※補足事項
保護団体が愛護センターから引き出して預かることでも「譲渡」とカウントされるため、保護団体で待機し、新しい家族との出会いを待つ段階の犬たちはこの数値の中には入っていません。保護団体にも引き出されず、その「譲渡」とカウントされなかった施設での殺処分を迎えた犬たちの推定総数。それが「3,000頭」です。

野良犬や野犬は、仔犬の方が捕獲しやすいことから仔犬の譲渡も多いため仔犬から犬と共に過ごしたいという方のライフスタイルにも合います。
成犬については、トレーニングや身体能力を楽しむ体力と余裕がある方にとって最良の選択になるでしょう。
雑種犬は、純血種と比較すると特定疾患も少なく身体が丈夫で健康的な犬が多い特徴もあり、個性あふれるその犬たちはパートナーとして最高の関係を築き、よき犬との人生を歩むことが出来ます。そんな社会の形が日本の文化として根付くことを願い、様々なアクションを実施します。

全国にある愛護センターでの実際の譲渡の流れは?

各都道府県に設置されている愛護センター。
行政機関のため、その譲渡フローは比較的同じ傾向がありますが、今回は、捕獲頭数が最も多い香川県を例に挙げて説明します。
講習会(毎週水/日曜日 開催)を受講し、講習会終了後、同日譲渡会へ参加することが出来ます。気になった犬との出会いがあった場合、エントリーをして数日審査待ち、後日譲渡可能の連絡を受けて正式に家族としてお迎えに行くことが出来ます。 香川県の場合、県外からの希望者もこの流れをクリアできるなら譲渡可能です。
譲渡に関わる費用は、マイクロチップと犬鑑札登録のみ実費負担となり2,000円程度です。

【参考】
香川県広島県熊本県

「野良犬・野犬」と聞くとどこかの地方で起きていること。のように捉える人がいるが、そうではありません。
現に、里山ではなく、住宅地に近い地域で野良犬・野犬が大量発生している地域があります。
それが山口県周南市です。全国で3番目に野良犬・野犬が多いという問題が起きています。
このことから「野良犬・野犬問題は、どの地域でもおこりうること」ということがわかります。 実際、東京都に近い茨城県や千葉県では「全国引き取り及び処分の状況リスト」の10位以内にランクインされており、例年それぞれ推定1,000頭以上の野良犬・野犬を捕獲しています。
避妊去勢をせずに、迷子にさせること、遺棄すること、放し飼いをすることで野良犬や野犬はますます増え、結果不幸の連鎖を作ります。
そのきっかけを作ってしまうのは、もしかしたら自分と暮らす犬かもしれない。 飼い主は、自分ごととして責任ある犬との生活をする義務があります。
生まれてくる全ての犬たちの幸せのために。

【参照】
環境省 「動物愛護管理行政事務提要
総務省 「ふるさと納税に関する現況調査について
一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査 令和元年度


Miyako
インフォグラフィックス担当|外大を卒業後、総合商社で総合職として働きながら、グラフィックレコーディングのスキルを独学で習得。19年4月に武蔵野美術大学造形構想研究科への進学をきっかけに退職し、現在は大学院生フリーランスとして、持ち前の明るさとグラフィックレコーディングスキルを生かしながら、様々な分野での「見える化」の可能性やコミュニティ作りを追求中!

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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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