2020.02.08.Sat.

公共機関へ乗車できない日本の犬たちの本質的な問題と課題

〜その為に私たち愛犬家ができること〜

文= enkara 横山 薫

犬と一緒に気軽に電車に乗ってお出かけできたらなぁ…
様々な理由から、そんな風に思ったことのある方は多いのではないでしょうか。
なぜ日本は電車やバスに犬と自由に乗れないのか?
今回は公共交通機関に犬と乗車することについて考えてみたいと思います。

日本の現状

電車の場合、実際には小型犬であれば絶対に犬と乗れない訳ではありません。
今回の記事は、犬と電車に乗るために必要な情報をお伝えするものではないため、それぞれの鉄道会社規約については割愛させていただきますが、日本各地の鉄道会社の多くは、概ね以下のようなルールを定めています。

  • ペット用キャリーバッグ等の持ち運びに適当な蓋が出来る容器に入れること。
  • ケースのサイズは、長さ70cm以内、タテ・ヨコ・高さの合計90cm程度、重さ10kg以内
  • 他のお客様に危害および迷惑をかけるおそれがないこと。

鉄道会社によりケースサイズや詳細等に多少違いはありますが、全ての鉄道会社に当てはまる規則としては、”犬が完全に覆われるような入れ物”に入れないといけないというものです。
また、ほとんどの鉄道会社はペットカートやバギーでの乗車を禁止しているため、事実上、大型犬は乗車できません。
バスに関しても同様のルールを設けているところがほとんどで、深夜バスや夜行バスなどは、いかなる場合でも乗車はできません。

ヨーロッパ各国の犬同伴乗車ルール

海外では、公共交通機関に犬と乗る際どのようなルールがあるでしょうか。
今回は、動物愛護国が多く存在するヨーロッパでの電車の乗り方に触れてみたいと思います。ヨーロッパの多くの国は、犬との乗車を許可しています。もちろん、同じ国であってもそれぞれの地域や鉄道会社によって細かな違いがありますが、一般的なケースを例に挙げたいと思います。

【ドイツ】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できるが犬用切符が必要。バック等に入っている犬は乗車無料。本来は口輪が必要。

【スウェーデン】
普通電車で動物OKの車両のみ、ケージ・バックなしでそのまま乗車可能(入口にステッカーが貼ってある)グリーン車は乗車できない。
座席の下に納まらない犬の場合は子ども料金を支払う。

【フィンランド】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できるが、犬の乗車OKの時間帯が決められている。(主に昼の時間帯)

【オーストリア】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できるが、口輪が必要。

【スイス】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できるが、犬用切符が必要。

【イギリス】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できる。

【フランス】
ケージ・バックなしでそのまま乗車できる。

【イタリア】
リードと口輪があれば乗車可能。中型犬まで、ひとつの車両内に1頭まで。

全体的に犬と乗車できることを前提としたルールを設けている国が多く、様々な方法で犬同伴者と一般の方の住み分けができている印象を受けました。

犬に対する向き合い方の違い

では、なぜこんなにも寛容な国が多いのでしょうか。
ヨーロッパでは犬と人との歴史は古く、人々の生活にとって犬が身近な存在だったことも理由の一つだと考えられます。しかしそれだけではありません。

現在、多くの国は犬を飼ったら飼い主と犬が共にドッグスクールへ通うことが一般的です。
ドイツでは数多くのドッグスクールがあり、どんな小さな町にも必ずドッグスクールがあると言われているほど身近な存在です。
ドッグスクールに通う理由は、「犬が社会性を身に着けるため」そういった点ももちろんありますが、そのほとんどは飼い主が「しつけ方を学ぶため」という理由です。

スイスでは数年前まで、犬を飼う前に飼い主が数時間の講習を受け、一定時間犬と共にスクールへ通い卒業認定を受けることが法律で義務化されていました。
それだけ「しつけ」が重要だとされているのです。
現在は廃止された義務化の法律ですが、それでも尚スクールに通う人が一般的です。
そのため、電車内では飼い主の側で大人しく座り落ち着いている犬がほとんどです。
すれ違う犬や人に吠えたり興奮したりする犬は少なく、飼い主の静止に応じることができる犬が電車に乗っているのです。

しっかりと「しつけ」を行うことが一般的であること、更にそれが犬を飼っていない人にも広く伝わっており認識され理解を得ていること。それが犬が公共機関の乗り物へ乗車が受入れられる1番の理由ではないでしょうか。

日本に圧倒的に足りない要素

一方、日本ではどうでしょう。
ドックスクールに通うということは、まだまだ一般的ではありません。それどころか「しつけ」の必要性を正しく認識している飼い主は決して多くはないというのが現状ではないでしょうか。

「可愛い目で見つめられるとついつい何かあげてしまう」
「ちょっとくらい吠えるくらいが元気な証拠」
「うちの犬は犬が苦手なの」

散歩途中や動物病院など飼い主同士での会話でよく聞くフレーズです。
これを静止できない飼い主と犬は、鉄道会社が犬の乗車を許可しても多くのトラブルを起こします。

enkaraヨミモノに、ドッグトレーナーコラムを寄稿して下さっているトレーナーの西村さんはこうおっしゃっています。

”犬は、「我慢」を経て「納得」していくもの。
その「納得」は「習慣」になり空気を吸うように自然に受け入れられるようになります。そこにストレスはありません。”

これは電車やバスに乗るためだけではなく、災害時にも必要になる大切な”しつけ”です。災害時は犬の命に直接関わってきます。それほどまでに、しつけやトレーニングは重要なものなのです。

数年前、ペットカートやバギーが許可されている首都圏の鉄道会社もありました。ただ、ステイをして落ち着くよう教えられていない犬は普段と違う環境に緊張し、当然ながらキャンキャンと吠えます。
また、蓋やカバーをせず乗車する飼い主も多くいたため、犬が苦手な方たちからは数多く苦情が寄せられ、残念ながら現在はペットカートやバギーは全面禁止になってしまいました。

犬に寛容な諸外国でも、公共交通機関に乗る際のルールは必ずあります。
オーストリアでもドッグトレーニングは一般的で、よくしつけられた犬がほとんどです。そんな環境であっても、突発的な事故が起きないよう、電車がきたら口輪をし乗車する。これが遵守されているのです。

犬たちの社会的地位の向上のためにできること

今回例に挙げたヨーロッパの国々でも、公共交通機関の乗り物に対しては寛容な社会ですが、現在も犬を取り巻く問題や課題はそれぞれに存在しています。
しかしながら長い歴史の中で、犬が市民権を得るまでに数多くの問題に直面し愛犬家たちが中心となって解決へと努力した結果が、今日の社会を創っています。

冒頭に記した通り、日本には日本の公共交通機関の乗車ルールがあります。
まずはしっかりとルールを守って乗車すること。
ルールを守れないようであれば一度自分と犬の関わりから見直すこと。それが犬と暮らしていない人や苦手な方々に理解をいただき、さらにはカルチャーとして認知をしてもらうために現段階として大事なことではないかと思います。

日本に於いて犬の社会的地位の向上を阻んでいる第一の原因は、飼い主、人間側にあるのだと多くの方が認識することができたら、社会における犬を取り巻く環境は柔軟な方向へ大きく変化します。
その中で、日本でも日本独自の形で大型犬と共に電車やバスに乗れる日がくることでしょう。私たちも愛犬家の皆様と一丸となってしつけやトレーニングについての知識を深め、情報提供やその環境を作っていきたいと思います。
それが人間の創った社会の中で生きる犬にとっての幸せに繋がるのではないでしょうか。

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