2020.04.15.Wed.

サウジアラビアで行う動物保護のカタチ(前編)

〜ダハラン在住 ピアース真実さん〜

動物保護のカタチは、国や地域によって大きく異なります。
その理由は経済や環境、教育や宗教観など様々です。
1つ認識をしておきたいのは”日本のカタチ”が基本でも標準でもないということ。
他の価値観を知ることで日本の動物保護も日本にあったカタチで変化を期待できるのではないか?
様々な国や地域で犬の保護に向き合う方たちのインタビュー連載。
今回は、サウジアラビアです。視野を広げることやイメージすることはどんなことでも大切だから。

プロフィール

ピアース真実さん
第3回目は、サウジアラビア在住のピアース真実さん。
日本在住時から動物看護師兼グルーマーとして勤務をしながら国内外で動物保護活動を学び、その課題や問題に対して積極的に関わってきた真実さん。
2016年、サウジアラビアへの移住後も動物保護問題に様々なアプローチを行ってきました。現在は、ご主人さまと2018年に生まれたお子さまと一緒にサウジアラビアで暮らしています。記事は、前編と後編に分けてお届けします。今回は前編「ピアースさんが行う動物保護のカタチ」です。

ピアースさんの経歴やサウジアラビアでの保護活動について

「日本の動物病院で動物看護師兼グルーマーとして勤務後、飼い主のいない犬、猫たちを助ける活動に本格的に取り組むため、動物保護の先進国で保護施設の仕組みや運営を学ぼうと思いニュージーランドとイギリスに留学しました。
様々な施設でボランティアをしながら経験を積み日本へ帰国。
再び動物病院で働き始めましたが、夫がサウジアラビアに仕事で行くことになり、私も共に移住することになりました。

もともとサウジアラビア滞在は1年ほどの予定だった為、動物と暮らすつもりもなく、サウジアラビアに来る前に夫から『かわいそうな状態の猫たちが沢山いるけど、日本にいる時みたいに保護してはいけないよ』と忠告されていたのですが、実際にガリガリに痩せ、お腹を空かせた猫たちを目の前にして放っておくことなど出来ず、治療が必要な猫は保護し、外の猫たちには毎日ご飯をあげ、TNR活動(※)を4年間続けてきました。
※外猫や犬を捕まえて、避妊去勢手術をし、元の場所に戻すこと

また、当初はサウジアラビア国内で新しい家族を探したものの、希望する方の“`動物を飼うことへの本気度、責任感が無いこと、譲渡後に起こる多くのトラブル”を経験し、どんなに費用と時間がかかってもサウジアラビアでは無く、海外で新しい家族探しをする事を決意しました。

今まで3匹の猫を日本へ、2匹の猫をアメリカに輸送、それぞれの国で合計4匹が新しい飼い主さんの元で幸せに暮らしています。
また、現在7匹の猫たちが海外輸送に向けて必要な医療処置を受けながら待機準備中です。
もともと1年の滞在予定でしたが、もうすぐ4年目になるサウジアラビア生活、2018年には息子も産まれ、2歳の息子も毎日一緒に約40匹の外猫たちの餌やりを一緒に手伝ってくれています。
私たちが住んでいる居住区は犬の飼育が禁じられている為、猫の保護を中心に活動していますが、いずれは犬たちの保護にも関われたら、と思っています。」

ピアースさんが考えるサウジアラビアとは?

「サウジアラビアはもともと女性に権利のない国でした。
私が移住した当初は、宗教警察が体全体をきちんとカバーしていない女性がいないかチェックしていましたし、ほとんどの事が禁じられている状態でした。
最近では女性でも運転免許を取得できるようになったり、働く女性が増えてきて国全体が変わってきているのを感じていますが、やはり昔からの考えを持った人はたくさんいるので、私たちは彼らの文化や考えを尊重しながら生活するよう気をつけています。
サウジアラビアの人にとっては宗教、神が何よりも1番であり、全ては神の思し召しという考えです。」

サウジアラビアの保護犬事情

「サウジアラビアには、小さな保護グループがいくつかあります。
また、最近では国内で初めての動物保護施設も設立され、少しずつ動物福祉の点でも変化が見られているように感じます。
動物保護をする人たちは私と同じように海外から移住してきた外国人が多く、やはり同じ理由で保護した犬や猫を国外に輸送して新しい家族を探すのが主流です。
かなりの費用と時間がかかる為、たくさんの数を保護出来るグループは少なく、全ての人たちが常にキャパオーバーで個人の負担が大きく、互いが助け合ったりする余裕もないのが大変残念です。

犬たちは排除の対象なので、保護されるのは銃で撃たれたり、虐待されて大怪我を負い、心に傷を負った犬がほとんどです。
サウジアラビアで犬を1頭保護するということは、怪我の治療をし、心のケアをしながら、トレーニングをする事。
高額な費用をかけて海外に輸送するという大きな責任が伴うので、保護をする人も少なく、保護される犬たちはほんの一握りのラッキーな犬たちです。
保護をしても一時預かり先を見つけるのに苦労し、外に戻すくらいならと結局、動物病院で安楽死を選択する人もいるのが現実です。」

前編ではピアースさんの動物保護のカタチについてお伺いしました。
今まで多くの経験をされてきた方でも、異国で傷ついた動物たちへの保護活動を行うことは簡単なことではなく、ピアースさんの活動と情熱に対し、心から尊敬します。その国の文化を尊重しながら、できることを日々地道に続けていくことで、未来の日常は少しづつ変化していくと信じています。次回後編は、サウジアラビアの人たちにとって犬という存在とは一体どんなものなのか。最新情報を伺います。

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